女性のショルダーバッグはココ・シャネルが初めて考案
ショルダーバッグは元々男性だけのもので、女性用はなかったということをご存知でしょうか?
ショルダーバッグの利点は肩に掛けるので、手が空くこと。男性用のものがいつ作られたかは知りませんが、旅人や兵士などは手に荷物を持っていては不便でしょうから、恐らくかなり昔からあったのではないでしょうか。女性用も昔からなかったとは言い切れませんが、少なくとも世間に女性用のショルダーバッグが認知されたのは、1929年2月のこと。ハイブランド・シャネルの創立者であるココ・シャネルがショルダーバッグを発表した時のことでした。
当時の女性のバッグの主流はハンドバッグ。機能性よりも、装飾性が重視されていました。ココ・シャネルのファッションの偉大さは、「女性を解放した」と表現されることもあります。しかし、彼女はただ「自分ならこういうのがいい」というのを既成概念にとらわれずに追求し、表現しただけ。その結果、その商品が普遍的な魅力をもっていたのです。
女性の服といえばロングドレスだった時代にスーツやリトルブラックドレスを作り、今でもそのスタイルは憧れの的で支持されています。バッグにおいても「女性はショルダーバッグはもたないもの」という常識はココ・シャネルには枷にはなりませんでした。彼女自身が持ちたいと思う機能的で品質の良いバッグ、それが「マトラッセ」でした。彼女が着想を得たのは、軍人が下げていたストラップからでエレガントさとはかけ離れていますが、それをココ・シャネルは類いまれな才能で女性がずっと持ちたいと思えるものに仕上げました。
「マトラッセ」のデザインの機能美
シャネルのチェーンバッグのシリーズである「マトラッセ」にはダイヤ柄にキルティングが施されています。シリーズ名である「マトラッセ」とは「綿入れをする」「袋詰めする」という意味で、日本ではふくれ織り、キルティングのことです。2枚の異なる素材を縫い合わせて、糸の引っ張る力でダイヤ柄を作り出しています。
すべてのダイヤが美しく歪みなく並んでいる様がとても美しいですが、このデザインは元々装飾性よりも、型崩れを防ぐため、丈夫さを考えて考案されたものです。マトラッセは実際にとても丈夫なので、毎日のように使う方もいますし、母から娘に譲られ、長年愛用する方も少なくありません。
「マトラッセ」の素材
現在ではマトラッセもオーソドックスなダイヤ柄だけではなく、デザインも多様化し、素材の種類も増えました。ここでは、代表的な5つの素材をご紹介します。
(1)ラムスキン

(2)キャビアスキン
シャネルオリジナル皮革素材であるキャビアスキン(牛皮)。キャビアのように光沢があるのでそう呼ばれています。表面を見ると、細かく凹凸があるのが特徴で、傷がつきにくく、目立ちにくいです。
(3)クロコダイル
最高級素材で、一点もののため、ほとんど手に入らないのがクロコダイル(ワニ革)です。通常300万円以上のため、持ち歩くのもためらわれますね。
(4)ツイード
ジャケットなどに用いられている毛織物の一種です。様々な色の糸を使って作られており、華やかで明るいデザインのものが多数あります。デザインがかぶりにくいので、他の人とは違うものを持ちたい場合、おすすめ。汚れが取りにくいため、注意が必要です。
(5)キャンバス

マトラッセのサイズと価格の目安
現在は様々なサイズの商品が販売されていますので、今回ご紹介するのはあくまで一例で目安です。価格も素材によってかなり幅がありますが、購入の際の参考にしてください。
・マトラッセ34
W33×H22×D10㎝
重さ:1110g(レザー)
価格:60万円~95万円
マトラッセシリーズの中で、最も大きなサイズです。小型のモバイルパソコンなら楽々入れられます。お出かけ用だけではなく、仕事用にも活躍しそうですね。重さは素材によって違いますが、バッグ自体、ずっしりとしています。
・マトラッセ30
W30cm×H20cm×D9cm
重さ:1010g(ラム)
価格:60万円~85万円
“デカマトラッセ”と呼ばれる大き目サイズです。スマホやお財布だけではなく、手帳や文庫本などがお出かけの際には必須の方にはとても便利。色々入れても、パッと取り出しやすいのも嬉しいですね。
・マトラッセ25
W25×H15.5×D6.5㎝
重さ:550g(レザー)
価格:50万円~80万円
上のサイズと比べると分かりますが、重さは半分ほどになり、かなりコンパクトです。長財布を入れるには少し小さめですが、それでも小さめのサイズやスマホを入れるにはちょうどよいでしょう。
・マトラッセ23
W23×H14×D6.5㎝
重さ:485g(レザー)
参考価格:50万円~75万円
マトラッセ25よりも気持ち小さめサイズ。使い勝手に大きな差はないですが、さらに軽く、可愛らしい印象になります。
・マトラッセ20・ミニ(mini)
約W20㎝×H15㎝×D6.5㎝
重さ:400g(ラム)
価格:35万円~60万円
物を入れて持ち歩くというよりは、アクセサリーとして持つような小ぶりのサイズ。ファッション性が高く、様々な素材、カラーのものを楽しむ方が多いです。
マトラッセのメンテナンス
丈夫に作られているマトラッセですが、修理が必要な場合は、公式のオンライン リペアサービスからインターネットを介して修理依頼できます。正規店での購入だけではなく、並行輸入品や正規代理店以外での購入、中古でも可能なので、まずは公式のサービスに相談するのがおすすめです。
ただし、直営店での修理を断られてしまうケースもあります。それは、かなり破損している場合、古すぎてパーツの在庫がない場合、一度正規以外の修理店で修理した場合です。
しかし、世代を超えて引き継がれるバッグなので、古いからとあきらめたくはありませんね。そんな時は、一般の修理店に依頼するとよいでしょう。修理店を選ぶ際は、以下のようなポイントを踏まえて選ぶのがおすすめです。
マトラッセは金属のチェーンの中にベルトが編まれています。だからこそ、丈夫なのですが、その部分が壊れたときは、チェーンの着脱ができ、チェーンのバリエーションも豊富でなければいけません。
バッグには様々なものを入れます。例えば、ハンドクリームや化粧品、飲み物、インクなどがつくことはよくあります。カビてしまうこともありますね。そうした通常のクリーニングではなかなか落ちない汚れやカビをしっかり落とす技術もポイントになります。
マトラッセにはシャネルのロゴマークをかたどった金具がついていますが、メッキが剥がれてしまうこともあります。とても目立つ部分なので、きれいに再メッキできるお店に依頼したいものです。
汚れや傷みに対して、クリーニングや修正だけではなく、全体的に染め替えという選択肢もあるとよいでしょう。新品同様にきれいになるというだけではなく、新たに違うバッグを購入したような気持ちで使えるのが嬉しいですね。染め替えの場合、豊富な色のバリエーションとセンスと技術を求められるので、経験豊富なお店に依頼する必要があります。
エナメルは人気のある素材ですが、傷つきやすく、汚れやすいという欠点があります。変色してしまうと、本来の輝きを失ってしまいます。エナメルの再加工の方法は複雑で、それが行える職人は日本ではあまりいないので探すのは困難です。しかし、エナメルの再加工ができる修理店ならその技術は高いと考えられるので、安心して任せられます。
一生添い遂げられる、受け継がれる、タイムレスの魅力を放つシャネルのマトラッセ。優雅さだけではなく、実用性を重視したココ・シャネルの商品だからこそ、様々な場面、服装にマッチするものを見つけたいですね。
▲クレアンなら技術の高い職人がマトラッセを修復